目次
おいしい甘夏!春に食べるのになぜ「夏」がつくのか?おいしい食べ方も知りたい!
甘夏。
酸味と苦み、そこはかとない甘さのミックス、上質なものが持つコク・旨み、が複雑な味わいとなり、おいしいですよね。
昨今の果物や野菜の世界は、なんとなく「甘い」ばかりがもてはやされていると、個人的に疑問をもつ私は、やっぱりいろいろな味が複雑に絡み合っているかんきつは、とても好きなのです。
逆に、甘さがみじんもない国内産の珍しいグレープフルーツを食べた時は、本当に甘くなくて喜んでしまったくらいです。(笑)(甘さよりも、鮮度や苦み、酸味、グレープフルーツ独自の旨さを重視していたから。)
さて、今回は「甘夏」をご紹介します。
甘夏が食べられる時期は、4月から5月。夏ではないですよね。
なんで、名前に「夏」がついているのか。名前の由来を探ると、自然にこの果物の由来が分かってきます。
今回は甘夏について、ご紹介します。
なぜ名前に「夏」がついているのか?
「甘夏」は、「夏みかん」が、枝先で突然変異してできた「枝変わり」によってできた品種になります。
夏みかんは、江戸中期(1700年代)に山口県に流れ着いた文旦系のかんきつの種から育てられ、発展したものです。
(そうすると、甘夏の苦みは、文旦の流れを汲むのですね。)
夏みかんは、秋の終わりごろには色づき、収穫可能なのですが、酸味が強すぎて直に食べるのには向いていませんでした。
それが冬を越して、初夏のころに酸味が減り、食べられるぞ…ということが分かってきました。
そこで、明治時代には、夏に食べられる、貴重なかんきつ、ということで広まりました。
夏に食べられる(ようになる)から、このかんきつに「夏」という言葉が付いたのです!
(※夏に売られてるのに、「冬瓜(とうがん)」というのも、この理屈です。「冬まで持つ(食べられる)」からです。)
ここまでが、「夏みかん」の名前の由来でした。
なお、現在は品種改良が進み、春に収穫して食べられるようになっています。
なので、春なのに、「夏みかん」が売られているのです。(慣れた名前をまた変えるのは難しいですからね。)
そして、甘夏に続きます。
・夏みかんから発生した種である。
・酸味が抜けて、食べられるようになるまでが夏みかんより早い。
・糖度も夏みかんより高い。=夏みかんより甘い。
ということで、「甘夏」と呼ばれるようになりました。
甘夏は、大分県で川野さんという方が育て始めたのが最初で、正式名は「カワノナツダイダイ」と言います。
※夏みかんや橙(だいだい)は、ほおっておくと、年を越して枝にずっとくっついている性質があります。
これが、子孫が「代々続く」という縁起かつぎに結びつき、もとは「ダイダイ」と呼んだそうです。
戦後に品種登録され、昭和40年代にはみかんに次ぐ存在のかんきつだったそうです。そして各地では、「夏みかん」と言えば「甘夏」のことを指す場合が増えました。
甘夏のおいしい食べ方!
甘夏は、もともとお酢の代用品として使われていただけあって、逆に美味しい食べ方のバリエーションは豊富です。
でも、まずは皮をむいて、中の薄皮までむいて、そのまま食べてください。
(熊本県水俣地方の人々が「水俣病」という公害被害を乗り越え、「無農薬」をめざし、代々作っている「きばるの甘夏」です)
(今年(2019年)春の「きばる」の甘夏は例年以上においしいので「当たり年」ですね。)
上の写真のように、そもそもが非常にジューシーでおいしいのです。
レモン、グレープフルーツ、ライム、などが好きな方には非常におすすめです。
(しぼって、チューハイにもいいと思います!)
そして、甘夏には「捨てるところがない」と言われています。
特に、ジャムや、「ピール(皮をシロップで煮たお菓子のこと)」は絶品になります。
お寿司、サラダ、酢の物、ムース…などなど、色んな使い方があります。
私はもう直に食べてしまうのがいちばん好きなのですが、マーマレードとピールが特におすすめですよ。
(レシピは、「きばる」さんのHPにありますのでそちらをどうぞ…)。
さいごに
今回は、4月から5月が最盛期なのに「夏」が付く果物、「甘夏」についてご紹介しました。
・文旦の流れを汲む「夏みかん」がまず江戸時代から存在したこと。
・そしてなぜそれが「夏みかん」と呼ばれたのか、という理由は、「初夏までおいておくと食べやすくなるから」。
・その「夏みかん」から変異する形で登場したので、名前に「夏」という文字が残った。
このような理由でした。
食べ方は、そのままがいちばんおススメですが、果汁をサラダや寿司に使う、丸ごと使うマーマレード、皮を甘く煮て作る「ピール」がおすすめでした。
高度成長時代に急成長した甘夏です。
現在は、鹿児島、熊本、愛媛、和歌山が主な産地です。
深刻な公害被害を受けた水俣の人々によって、できるだけ農薬を使わないで作り続けられ、今も根強い支持を得ている甘夏もあります。
甘夏は酸味が抜ける3月以降が食べごろで、5月ごろまで続きます。他のかんきつが店頭から消えてしまっても食べられます。ぜひ年に1度は食べたいと思います!
★関連して…「文旦」の流れをくむ、他のかんきつ→「美生柑(日本のグレープフルーツと言われる)」